あがり症(社交不安障害)

あがり症(社交不安障害)とは

あがり症(社交不安障害)とは

あがり症は専門的には社交不安障害とも呼ばれます。
世の中には恥ずかしがり屋な人は多く存在し、誰しも人前に立つと緊張したりあがってしまうことはあります。
しかし、あがり症の方は恥を欠くことを恐れるあまり日常的な外出ができなくなる、あるいは学校や会社に出勤できないなど社会的生活に支障をきたしてしまうことがあります。「手や声が震えていることが人にわかってしまうのではないか」といった不安から人前で話すことや、字を書いたり、飲食をするような状況を避けるようになります。また、上記のような場面に遭遇した場合には不安のあまりパニック発作を起こす場合があります。

あがり症(社交不安障害)は大きく「全般性の社交不安障害」と「非全般型の社交不安障害」の二つに分けられます。「全般性の社交不安障害」は社会的状況全てを回避する行動をとってしまう状態で、「非全般型の社交不安障害」は特定のいくつかの社会的状況でのみ回避行動をする状態です。

発症しやすい年代

あがり症の25歳以上の発症は稀であり、10代半ばの発症がもっとも多く、小児期にもみられます。性別では比較的女性が多くみられるといわれていますが、実際に医師の診察を受けるのは男性のほうが多い、あるいは同程度という報告もあります。
知らないうちに少しずつ症状が強くなっていく場合もあれば、強い精神的負荷を受けたり、恥じをかいたりした時に突然発症することもあります。
どのくらいの数の人間があがり症にかかるかに関しての結論は出ていません。
米国の調査によると、20%の人が人前に立つことに強い恐れを抱くものの、あがり症と診断されるほどのものは2%程度する報告もあれば、生涯有病率は12%にのぼるとする報告も存在します。

あがり症の症状と場面

自律神経に関連する症状

  • 赤面
  • 口が異常に乾く
  • 吐き気やめまい
  • 下痢や腹痛
  • 強い動悸
  • 息をするのが苦しい
  • 声のふるえ
  • 手足のふるえ
  • 大量に汗をかく
  • のぼせ、ほてりを感じる

あがり症の方が不安を感じる社会シーンの例

  • 人前に立つ(あいさつやプレゼン、発表など)
  • 人前で字を書く
  • 電話に出る、かける
  • 雑談をする
  • 美容院
  • 異性と関わる場面
  • 公共の場所での飲食、会食 など

あがり症の原因

あがり症になる要因は、生まれ持った体質や生育環境が大きく影響するといわれていますが、明確にはわかっていません。
あがり症は社会的活動の中で戸惑いを感じて、行動ができなくなるような生物学的な体質がある方や、不安を感じやすい(別の言い方では、脳の扁桃体の過活動状態が生じやすい)方に引き継がれると考えられています。
上記のような体質の人は精神的な負荷により、人前でパニック発作を起こすことがあります。そして一度発作を起こすと、脳の扁桃体が過活動状態となり、また同じような社会的状況に置かれた時に精神的に不安定な状態になり、発作を繰り返すようになります。
他には、大きなミスを人前でしてしまった人が発症するケースもあります。

脳内アラーム機構

あがり症で、同様の社会的な状況を避けてしまう原因としては、パニック障害と同じく「脳内アラーム機構」が異常をきたしていることがあげられます。
「脳内アラーム機構」が異常をきたすと、前頭葉が同様の社会的状況を命に関わる状況だと誤認し、回避行動をとります。
上記で言及した生物学的体質とは、神経伝達物質(ドーパミンやセロトニンなど)を分泌する間脳と言う脳の部位が弱いことを示します。同部位が弱いと、精神的な負荷がかかった時に、パニック障害と同じような前頭葉や扁桃体の機能障害が起きると言われています。

生育環境

あがり症においては特に小児期の家庭環境など、生育環境も原因の一つとして考えられています。例えば行き過ぎたしつけや過保護、無関心で情緒的な支えに欠けた環境、否定的な環境、両親との関係不和、虐待などが原因になり得ると報告されています。

あがり症の治療

診察室あがり症の症状を抑えるために、SSRIと言う心のバランスを調整するお薬や、抗不安薬と言う不安を抑制するお薬が中心に用いて治療します。他に、あがり症の原因となる行動を少しずつ経験し、克服することや成功体験を重ねることで改善させていく心理療法もあります。

服薬治療

服薬治療を用いる目的としては、精神的負荷と関連する脳内の神経伝達物質の不具合を調整することです。
通常、SSRIというセロトニンと脳内神経伝達物質の調整を行うお薬、抗不安薬、βブロッカーと呼ばれる動悸や震えを抑制するお薬などが活用されます。

心理療法

心理療法では、認知行動療法などを通じて、人に対する恐怖を加速させる心の問題を対処します。例を挙げると「劣等感」が人前に立つ場面で強い不安反応に繋がったりします。しかし、こうした考えは長い期間を経て本人の思考回路に染み付いており、変えようと思っても簡単ではありません。
この思考の歪みを改善するためには考え方を健全な方向へ導くと同時に、精神的不安が生じる場面を避けずに向き合って克服する訓練していきます。

治療のポイント

早期発見・治療

治療の遅れは社会機能の低下や病気を長引かせることに繋がります。

治療は協力して行う

あがり症において、担当医のみ、もしくは患者様だけの意識が治療に向いていても上手くいきません。医師や患者様、そしてそのご家族が一丸となって、初めて治療が上手くいきます。

前向きな生活を意識する

一気に社会復帰しようとするのではなく、一歩一歩の積み重ねが症状改善への近道です。症状など向き合いながら、お薬などを活用し、やりたいことややるべきことをこなしていくことが重要です。

ご家族や周囲の方々の理解

「気の持ちようが悪い」「メンタルが弱いから」と患者様はご自身を責めて思い悩んでいることが多いです。そんな時、周りの方の不用意な励ましはよりご本人を追い込むことに繋がります。
まずは、病気への正しい理解が必要になりますので専門医への受診が最優先です。
早期治療が社会的機能の維持、あるいは社会復帰に繋がります。症状などを理由に専門の医療機関への受診を勧めましょう。

監修

新橋メンタルクリニック
院長 狩野 彰宏

「メンタルケアで全ての人が今よりも生きやすく輝ける未来を目指して」

明るい未来を紡ぐために、当院は一心一意に皆様の心に寄り添ってまいります。
心のお悩みや困りごとがありましたら、どうぞ何なりとお問い合わせをくださいませ。

院長

「メンタルケアで全ての人が今よりも生きやすく輝ける未来を目指して」

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