パニック障害では前触れなく強い不安や恐怖が訪れ、手足の震え、吐き気、発汗、動悸やめまい、窒息感などがパニック発作として起こります。自分では症状をコントロールすることが難しく生活に支障をきたす心理的な病気です。
発症するのは女性の方が男性より多く、100人いれば1人が発症する決して珍しくない病気です。
パニック障害にかかると、発作が起こりやすいエレベーターや電車、人混みなどを避けようとして外出することができなくなり、通勤や登校など、社会生活を送ることができなくなる方も少なくありません。さらに、外出を控え続けたことによって、うつ病を併発してしまう方も非常に多く見られます。
しかし、パニック障害は重篤な症状にも関わらず、発作は短時間で改善し、医療機関で検査を受けても異常が見つかりません。検査しても身体に異常ない場合はパニック障害が疑われます。
パニック障害の症状として、「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」などが挙げられます。
パニック発作は、唐突に強い不安感や恐怖が訪れ、めまいや動悸、呼吸困難に陥ります。
時には、寒気や胸の不快感、痛み、発汗を伴い、その症状は数分程でピークに達します。
この発作が予期せず何度も起きてしまうのが特徴です。
概ね1時間以内に発作は治まりますが、発作時には「自分は死んでしまうのではないか」「自分が自分でなくなってしまうのではないか」といった恐怖を感じます。
パニック障害でなくても、例えば閉所恐怖症の人が、狭い場所に閉じこめられたりした時にパニック発作がみられることもあります。
しかし、このような特定の環境などによって引き起こる場合は、パニック障害とは区別して扱います。
発作が起こるのではないかと不安になる、心配を感じることを予期不安と言います。
パニック発作は時間の経過とともに治まりますが、しばらく時間を空けて繰り返し起こります。
繰り返し起こるため、平常時でも「次の発作があるのではないか」、「次の発作はもっと激しくなるのではないか」「次の発作で死んでしまうのではないか」と不安を感じるようになってしまいます。
パニック発作はいつ発作が起こるかわからないため、不安に思うことである特定の場所や条件下に置かれると、「発作が起きそうな気がする」、「その場所で発作が起きたら恥をかきそう」、「誰にも助けてもらえないのではないか」、「逃れることはできないのではないか」と考えてしまいます。
想像して思い浮かべた場所や状況が不安になり避けるようになります。その状態を広場恐怖と言い、パニック障害に併存することがあります。
また、広場恐怖とは言いますが、苦手に思う場所やシチュエーションは広場だけでなく、人が多い場所・電車やバス・百貨店・一人での外出など恐怖を感じる場所は人それぞれで違います。
広場恐怖が強くなると外出すること自体を避けるようになり、仕事や日常生活が送れなくなったり、人間関係にも苦手意識が生じるといった影響も出てきます。引きこもることで、気分が落ち込み、うつ病を併発してしまう方も少なくありません。
また、広場恐怖を伴わないパニック障害も存在し、3%の方に該当するというデータも報告されています。
パニック障害により日常生活に不安を感じたり、不安により行動制限が起こり、生活の質は著しく低下してしまいます。日常生活への不安から睡眠薬やアルコールに依存してしまう傾向があり、健常者と比べて自殺を試みる確率も高い傾向にあります。
パニック障害の原因のメカニズムはまだ解明されていませんが、精神的な負荷や遺伝子の働き、もしくは脳内の伝達物質の働きに関連していると考えられています。
パニック障害を発症している一等親の血縁者がいる場合は、いない人に比べてパニック障害になる可能性が高いというデータがあります。
さらに一等親のパニック障害を発症した血縁者が20歳未満で発症している場合は、さらに発症率があがると報告されています。
身内の方の死や病気にかかってしまった時など、大きな精神的負担がパニック障害発症のきっかけになるとされています。
また、パニック障害の発症率は、小児期に虐待を経験した方や喫煙をしていた方が高いといわれています。
人間の感情や知覚、運動、自律神経は脳にある多くの神経回路や神経細胞、その間を情報が行き来することで生じると考えられています。
現状ではまだ、パニック発作が起きるメカニズムは判明していませんが、何らかの原因で一度パニック発作が起きることで、不安を抑えるはずの神経回路に誤作動が生じることで、繰り返し発作が起きるとされています。
パニック障害かどうか判断するためには、以下の4項目にあてはまるかどうかを確認します。
パニック発作に関連する行動を変更したり回避したりする、または、発作が再び起こるのではないかという不安が一ヶ月以上継続してある
発作が起こる原因が他の精神疾患(PTSD、強迫症、社交不安障害など)に当てはまるものではない
他の何らかの病気や薬物が発作の原因ではない
また、鑑別が必要な類似した症状が起こる疾患には下記のようなものが挙げられます。
甲状腺機能亢進症:落ち着かない、不安を感じる、興奮するなどの症状が起こる病気で、パニック発作と鑑別する必要があります。
パニック障害の治療法は大きく二種類で、認知行動療法(精神療法)と薬物療法があります。
パニック障害は、症状が悪化していくと気分が深く落ち込んで行き、日常生活、社会生活への影響がより強くなって行きます。なるべく早い専門医の相談をお勧めします。
パニック障害では、不安のあまり「このまま死ぬかもしれない」など偏った思考で、自分の行動を制限してしまいます。
認知行動療法では、「認知療法」と「行動療法」を統合して行う治療です。
まず、認知療法ではセラピストとの対話で自分の思考の偏りに気づき、考え方を修正していきます。
行動療法は、例えば電車に乗る際に不安が高まる状況を克服するためには、まずは電車の近くに行くといった小さなステップに分けて目標を設定し、達成して少しずつ心と体を慣らしていきます。
パニック発作を抑えて予期不安を和らげるために薬物療法が用いられます。
主に抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とベンゾジアゼピン系抗不安薬が使用されています。
SSRIはパニック障害に効果があるとされています。もともとは抗うつ薬として開発されましたが、うつ病以外の不安症にも効果が発揮されました。
SSRIには「安心ホルモン」と呼ばれるセロトニンを増やす効果があります。しかし、副作用として、眠気や吐き気、めまいなどがあり、症状と副作用のバランスを取るために医師と相談して調整する必要があります。
速やかに筋肉の緊張や不安感を和らげる効果がある抗不安薬の一つです。パニック障害ではその性質から不安症状が出た時の頓服薬として用いられます。ただ副作用として依存性があるため長期間の使用は厳禁です。他にも副作用として眠気やふらつきなどもあり、副作用が強い場合には、抗不安薬を別のものに切り替えるなどの対応が必要になります。
パニック障害はもうダメかもしれないと恐怖を感じる病気ですが、紹介した治療法を行うことで症状が出ない状態までに回復し日常の生活に戻ることができます。
しかし、回復した後も再び発症する可能性があるため、認知行動療法を継続することが大切です。
予防にはパニック発作の誘発物質とされる、アルコールやタバコ、カフェインなどを過剰に摂取しないように心がけましょう。
また、規則正しい生活を行い十分な睡眠を取る、また精神的負荷を貯めないことを意識することで、自律神経が安定していきます。
近年ではパニック障害をご存知の方も増えてきており、病気の症状などへの理解が深まりつつあります。治療を行う上で周囲の人がこの病気の大変さを理解し、患者様の辛い思いに寄り添って治療のサポートをすることが重要です。
パニック障害は適切な治療を受けることで回復が見込まれる病気です。まずは病気を理解して向き合い、焦らずに医師とコミュニケーションを取りながら、しっかりと治療を行っていきましょう。
「メンタルケアで全ての人が今よりも生きやすく輝ける未来を目指して」
明るい未来を紡ぐために、当院は一心一意に皆様の心に寄り添ってまいります。
心のお悩みや困りごとがありましたら、どうぞ何なりとお問い合わせをくださいませ。
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