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自律神経失調症について

自律神経失調症とは

自律神経失調症とは「健康を保つには自律神経を整えることが大事」。みなさんも、このようなフレーズを一度は耳にしたことがあるでしょう。
健康志向も高まりつつあり、自律神経を整えるための本やメディアでの紹介も目に触れやすい時代となっています。

しかし、そもそも自律神経とは何か?自律神経のバランスを整えるとはどういうこと?と具体的なイメージが湧かない人も多いでしょう。自律神経そのものは、外観からは把握できないからです。

今回のテーマは、そんな自律神経の不調から起こる「自律神経失調症」です。
なんだか身体がだるい。気力がなく、あらゆる関節がどうにも痛くて明らかに調子が悪い。頭がのぼせて、めまいまでするようになった。しかし、病院にいっても一向にはっきりした原因が見つからない。
そういう人にも自律神経失調症が潜んでいる場合があります。

どんどん症状が慢性化してくると、不調が悪化してきて日常生活にまで支障が出てしまい、あるいは体調が悪いものの、“体調が悪いのが当たり前”のまま生活を送り、更に自律神経が乱れる悪循環に陥ってしまう。そんな状況にもなりかねません。

実は、「自律神経失調症」は病気ではありません。自律神経のバランスが崩れることによって起こっているであろう症状を総じて「自律神経失調症」という名称で呼んでいるのです。

自律神経がバランスを崩すというのは一体どういうことなのでしょうか?また、うつ病とは何が違うのでしょうか?
今回は、自律神経の働きやメカニズム・バランスを崩したらどのような症状が出てくるのか、うつ病との違いは何か?という点から自律神経失調症について紐解いていきましょう。

「自律神経」とはなんなのか?

 

自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」を総称した呼び名になります。全身に張り巡らされており、私たちが意図しなくても、その名の通り自律的に働いてくれるのが特徴です。
みなさんがこのページを見ている間も、自律神経の働きのおかげで意識しなくても心臓や胃腸が動き、呼吸をし続けることができるというわけです。

主に交感神経は日中に優位・副交感神経は夜間に優位になります。
交感神経は活動時によく働き、興奮・緊張の作用を持ちます。逆に副交感神経は休息時に優位に働き、鎮静・抑制の作用を持つことはよく知られているところですね。

片方どちらかだけが働いているというわけではなく、常に同時に働き続け、必要な時にはどちらかがより強く働く、という認識で良いでしょう。
それぞれが、ホメオスタシス(身体恒常性)といって人間の生理的機能に必要な役割を絶えず担っている、とても重要な組織なのです。

自律神経とは何なのか

 

自律神経を「失調」するというのはどういうことか

しかしながら、さまざまな理由でこの交感神経・副交感神経のバランスが取れなくなってしまうことも珍しくありません。文字通り「失調(=バランスを崩す)」するということですね。バランスが取れないという状態をもう少し具体的に表現すると、適切な場面で適切な神経の働きを調整することができない、という意味です。

バランスが取れなくなると具体的にどういう症状が現れるかというと、

  • 頭痛・腰痛・肩こりなどの身体各箇所の不快感・痛み
  • 動悸や息苦しさなど胸部症状
  • 疲れやすく、全身的な重だるさが続くなどの倦怠感
  • 寝汗がひどい・不眠など睡眠状態の不調
  • 腹部の不快感や胃痛・便秘や下痢などの消化器症状
  • 落ち込みやすい、なんとなく気分がすぐれないといった精神症状

などが出現してくるようになります。
幅広く感じるかもしれませんが上記はあくまで一例であって、自律神経は人間の身体と心のありとあらゆる部分を担っていますから、症状はもっと多岐に渡ります。こちらは症状の項で詳しく後述します。

更にこれらは自律神経のバランスの崩れによって出てくるものですから、不調の訴えのある場所の検査、たとえば医療機関で心臓や胃腸の問題を探したとしても何も異常が見当たらず、見逃されることも少なくありません。
なんとなく体調が悪そうだが身体的には問題がないので気にしやすい性格なのだろう、とそれだけで片付けられてしまう可能性もありえます。

自律神経は本来、自分たちの活動を助けてくれる重要な神経です。
例えば走ったりスポーツをしたりなどの活動中には、交感神経の働きが強くなることによって筋肉が使いやすいように緊張状態にしたり、汗をかいたり、呼吸が荒くなったり脈が早くなったりすることはとても自然なことです。
呼吸を大きくして酸素を多く取り入れ、脈を速くして全身の組織に酸素を送りこむことで筋肉や内臓が効率的に長く活動しつづけることが出来るからです。

逆に、夜に休息状態になる時には副交感神経が優位に働いて呼吸や脈をゆっくり落ち着かせたり、筋肉の緊張を緩め、心を鎮めたりして理想的なリラックスの状態を作り出します。あらゆる筋肉・内臓の活動を鎮め、しっかり休息が取れるようにします。

ところが、自律神経失調症では、これら交感神経と副交感神経のバランスがうまくとれなくなります。

肩こりたとえば、交感神経の働きが過剰になりすぎると、大きな活動をしているわけでもないのに普段から緊張状態に陥ってしまい筋肉が緩まず、頑固な首凝りや肩凝りになってしまったり、筋肉がこわばって痛みがあるのが当たり前になってしまうこともあるでしょうし、普段から心臓がやたらとドキドキしていて脈が速くなることもあるかもしれません。
休息すべきときに気が昂ぶってしまい眠れなくなる、心臓がどきどきしてリラックスとは程遠いなどの不調を生み出すケースもあるでしょう。

副交感神経が過剰に働いていれば、起きていなくてはならない場面でなんだかだるい、眠いといった状態に陥ったり、血圧の調整が出来ずに長時間座っていられないといった症状が出てくる可能性があります。
活発な体の動きが必要である場面でも常にセーブがかかった状態なので、倦怠感があったり、のぼせ、立ちくらみを起こすこともあります。ひどいときには活動中に失神を起こすこともあるでしょう。

本来、緊張状態になるのも眠くなるのも人間の生理的現象として必要なものです。
しかし、運動時は適切に緊張する、リラックス時は眠くなる、といった交感神経と副交感神経をうまく切り替えないといけないタイミングで切り替えることが難しかったり、いつまでも交感神経が興奮してしまっている・あるいは副交感神経の働きが強くなってしまっていると、生活の中で困ったことになってしまいます。

適切なタイミングでそれぞれがバランスをとって働くのが難しくなる、これが自律神経失調の最大の問題といえるでしょう。

自律神経失調症の4タイプ

自律神経失調症を引き起こしている要因によって、4つのタイプに分類されます。
当然ながら、どれか1つに当てはまる場合もあれば、複数の要因や環境因子が絡み合って症状を引き起こすこともあるため1つの考えかたとして捉えるのがよいでしょう。

本態性型自律神経失調症

自律神経のバランスが、生まれつき崩れやすい故に起こるタイプです。
遺伝やもともとの体質により自律神経失調症を起こしやすい、という認識でよいでしょう。
低血圧であるとか子どもの頃から体力がない、などといった症状がみられやすくなります。
環境の変化やストレスがさほど大きくなくても自律神経のバランスを崩しやすいのがこのタイプの特徴です。

神経症型自律神経失調症

心理的要因がきっかけとなって自律神経のバランスを崩すのがタイプです。
神経質な面が目立ち、ちょっとした環境の変化や周りの反応に敏感で気にしすぎてしまうのが特徴といえるでしょう。

心身症型自律神経失調症

責任感が強い・几帳面で真っすぐな性格・真面目な人が、無理をしすぎたりストレスを我慢しすぎたりして陥るのがこの心身症型の自律神経失調症です。身体面と精神面・どちらにも症状が出てくるのが特徴です。
4つの自律神経失調症のタイプの中でも最も多いとされています。

抑うつ型自律神経失調症

心身症型自律神経失調症の症状が進行すると、このタイプに移行すると言われています。
身体各箇所の原因不明の痛みが続いたり、倦怠感がなかなか取れないなどといった身体症状のほか、意欲が出ず、活気がなく、落ち込みが激しいなどといった状態が目立つようになります。
症状だけで見るとうつ病と判別がつきにくく、重症化すると生活にも支障が出てくるようになるため、早い段階で専門医に診てもらうことが重要になってきます。

自律神経失調症の症状

次に、自律神経失調症の症状について挙げていきます。
ありとあらゆる器官をコントロールしているのが自律神経ですから、全身どこに症状が出てもおかしくないと考えておきましょう。

  • 頭部:頭痛・頭が重い感覚
  • 目:目が疲れやすい・ドライアイ・目がゴロゴロする・ちょっとした光を眩しく感じる
  • 耳:耳鳴り・耳が詰まったような感覚・めまいがある
  • 口:口が乾く・口の中が痛い・味覚がおかしかったり感じにくかったりする
  • 喉:何か詰まったような感覚・飲み込みづらさ・話しづらさがある
  • 心臓:心臓がドキドキする(動悸)、胸が痛い・胸が押しつぶされそうな感覚
  • 肺:息苦しい・息が詰まって呼吸がしにくい感覚
  • 胃腸:胃がムカムカする・胃痛・腹痛・便秘・下痢・吐き気・ガスが溜まりやすい
  • 手足:痛み・しびれ・震える・冷える・火照る
  • 皮膚:汗をかきやすくなる・かゆみが出る・痛みがある
  • 筋肉、関節:筋肉が凝る・力が入らず脱力してしまう・痛みがある
  • 血管:座っているとクラクラする・血圧が高くなる・血圧が低くなる
  • 膀胱:頻回に尿意を催す・尿が出づらくなる・尿を最後まで出し切れない感覚がある
  • 生殖器:勃起しにくくなる・射精しにくくなる・生理周期が乱れる
  • 全身:微熱が続く・倦怠感があり、疲労が取れない・食欲不振になる
  • 精神:落ち込みが続く・イライラしやすい・情緒不安定になる・活力が湧かない

などです。症状の数としては、覚えきれないほど多いことが分かりますね。
もちろん、部分的に症状が出現する場合もあれば、複数の症状が同時に出現する場合もあります。自律神経の働きは一定ではありませんから、日や時間帯によって変わることもあるでしょう。上記以外の症状が出現することもあります。
痛みのある場所が変わったり、程度が日によって軽くなったり重くなったり、落ち込んでいたと思ったらイライラが強くなったりと一定しないことも珍しくありません。

なぜ自律神経が乱れるだけでここまで症状が多岐に渡るのか?と疑問に思う人もいるでしょう。

例えば「痺れ」と「痛み」「凝り」は症状としてはそれぞれまったく別のものにも見受けられます。しかし交感神経が常に過剰に働いている状態になると血管が収縮する機会が増えるということになります。単純に考えると、血管は血液が通る道なので、血液の通り道が狭くなって血流が悪くなるということにもなるのは自然な流れです。

この血流が悪くなったサインとして痺れを招くことがありますし、筋肉内の血液循環が悪いことで疲労物質が溜まりやすくなって凝りを発生させる場合もあります。血行不良そのものが痛みを発生させる場合もあれば、凝りが慢性化してきて痛みを感じるケースもあるでしょう。
それぞれ別々の症状のように感じても、根本的な原因は同じです。

このように、交感神経が働きすぎるというだけでもいろんな症状を招くものです。そして何度もお伝えするように自律神経は全身の器官に影響を与えるものですから、全身各箇所にあらゆる不調をきたしても何らおかしくは無いということですね。

自律神経失調症の原因

遺伝以外に、自律神経失調症を招く要因について見ていきましょう。

個人要因

その個人の性格特性や生理的特徴から来る要因です。

ホルモンバランスの変化

ホルモンバランスの変化自律神経失調症は、女性のほうが多いとされています。
女性ホルモンの分泌は、脳の「視床下部」と呼ばれる部分が担当しています。視床下部から下垂体と呼ばれる部分へ、そして卵巣へ情報が伝達されることで女性ホルモンが分泌されます。視床下部というのは自律神経のコントロールの中枢でもあります。

ところが、中年期(更年期)には視床下部からの指令を受けても、卵巣が女性ホルモンをうまく放出できなくなります。
しかし、視床下部は「女性ホルモンが足りない」という情報だけを受けとるので、女性ホルモンを出すようにひたすら指令を出し続けます。
その間は、視床下部が活発に働き続けることになるため、視床下部が中枢となる自律神経も少なからず影響を受けてしまうのです。

自律神経失調症の症状である「身体の火照り」や「めまい」「多汗」「情緒不安定になる」などを見てみると、「あれ?これって更年期障害なのでは?」と思った人もいるかもしれません。ホルモンの問題ということを考えれば、自律神経失調症と更年期障害の根本的原因は近からず遠からずといった関係性があるというわけですね。

ストレスをためやすい性格特性

自律神経失調症は、ストレスを抱え込みやすい性格特性が要因の一つであるとされています。

  • 真面目で実直
  • 感情表現が苦手
  • なんでも引き受けやすく、頼まれたら断りづらい
  • ストレス耐性が弱く、ささいなことを気にしてしまう
  • 気持ちの切り替えがうまくいかない
  • 自分の本心に気が付きにくい・気持ちを抑え込みやすい
  • 人の評価を気にしすぎる
  • 円滑な人間関係を作るのが困難

こういった性格特性が、日々の我慢を生み出しやすく、その慢性的な我慢が自律神経の乱れへと繋がり結果的に症状を出現させるというのが1つの説として有力です。
ストレスを受け取りやすく、自分がストレスを受けているということが気づきにくい・またストレスをうまく処理できないという特徴があると自律神経系にも負担がかかりやすいということですね。

環境要因

その人を取り巻く環境も、自律神経失調症の要因とされています。

生活習慣の乱れ

現代病ともされる生活習慣の乱れは、自律神経の不調も引き起こします。

  • スマホの普及によって強い光の刺激を受けたり脳が大量に情報を受け取るようになる
  • スマホやSNSをずっと扱うことで眠れなくなるといった睡眠時間の短縮
  • 運動機会・運動量の不足
  • 四六時中、冷暖房のかかった部屋に身を置くための体温調節をする機会の減少
  • 過食や胃腸に負担のかかりやすい食事をとることでの慢性的な胃腸への負担
  • 喫煙や飲酒など自律神経を直接刺激しやすい嗜好品の摂取

など、生活習慣の乱れはとても身近なものとなっています。

生活習慣の乱れ生活習慣を正せばよい、というのはシンプルな答えかもしれませんが、労働と家事・育児・プライベートなどに問題を抱えている場合、どうしても生活リズムは崩れてしまいます。
好きなものを食べたり飲んだりすることでストレス発散をしているかもしれませんし、夜遅くまで起きて親しい友人と喋ったり、好きな動画を見る時間が楽しい、という人もいるでしょう。そうなると、生活習慣が乱れやすくなるのは必然的ですし一概に生活リズムを正すように、とも言えません。

ただ慢性的なストレスを抱えたままプライベートで発散するような生活を続けていると、その場その場はしのげても、いずれ体に限界が来ます。いつも戦闘態勢でいると、交感神経が働きすぎの状態になって、身体の各箇所や精神の問題を起こすようになるからです。

 

有病率

正確な有病率は分かっていません。

性差・好発年齢

男女関係なく発症しますが、一般的にホルモンバランスの影響を受けやすい女性のほうが自律神経失調症を有しやすいと言われています。

好発年齢については、どの年代だから発症しやすいということはありません。
小児期では自律神経の働きも成長過程にあり未成熟の場合があり、その影響からコントロールを崩すケースがありますし、生まれつきコントロールしづらい特性がある場合もあります。

青年期では仕事に邁進する年代ですので、職場環境や仕事と家庭の両立からストレスやプレッシャーがかかる場面が増え、交感神経が刺激される場面が必然的に多くなって副交感神経の働きが弱くなることも珍しくないでしょう。
また生活習慣の乱れもコントロールの不調に拍車をかけやすいです。

中年期になると男性・女性ともに自律神経そのものの働きが衰えてくる影響もあり、自律神経失調症を発症する可能性があります。

このように、ライフステージのどの段階においても自律神経失調症を引き起こすことはあることを理解しておくとよいでしょう。

自律神経失調症の診断と予後

自律神経についての検査方法は後述しますが、診断基準は明確には設けられていません。
自律神経失調症について取り扱っているサイトの中には自律神経失調症のチェックリストや診断テストなどが設けられている場合がありますが、当てはまるからといって自律神経失調症と確定するわけではありません。あくまで、補助的に使用するものということを覚えておきましょう。

自律神経の乱れによるものと思われる症状が継続的に存在しており、かつ身体的病変・または精神疾患・精神障害でもないと鑑別が出来る場合には自律神経失調症と診断されることが多いと考えてもらって大丈夫です。

自律神経の検査方法

自律神経のいくつかの検査方法を紹介していますが、基本的に診断をするにあたって数多くの医療機関では、下記の検査自体ほとんど行わないということは念頭に置きましょう。
時間や労力がかかるということと、特に検査したからといって治療や診断に影響するわけではないからです。
また、何らかの疾患による自律神経系の異常の場合も検査値に影響が出ますから、自律神経失調症の診断に使用できる検査方法というわけでもありません。

ヘッドアップティルト検査

失神の原因を調べるための検査です。自律神経の調節異常が起こると血圧調整が出来ず失神を起こしやすくなるため、この検査で調べることがあります。
ティルト台と呼ばれる検査台に横になってもらい10分間安静にし、その後少しずつ頭部の角度を起こして傾斜をつけることで、自律神経の働きを検査します。

眼球圧迫検査

1分間眼球を圧迫した後に、脈拍の変動を見て自律神経の働きを見る検査方法です。
眼球圧迫前と比べて圧迫後の脈の減少が一定数以上の場合、陽性とされます。

寒冷昇圧試験

一方の手を氷水の中に1分間浸して,血圧がどれくらい上がるかで自律神経の働きを確認する検査方法。上の血圧(収縮期血圧)が20 mmHg、下の血圧(拡張期)で10~20 mmHgの血圧の上昇がみられるのが正常で、血圧が上昇しないのは自律神経の調節がうまくいっていないと判断されます。

うつ病との違い

自律神経の乱れは精神にも影響を及ぼすことから、うつ病との鑑別が非常に重要になってきます。その症状がうつ病から来ているのか、それとも単に自律神経の問題に留まっているのかを精査しなくてはなりません。
また双方も全く無関係ではなく、うつ病から自律神経の不調を招く場合もあれば、先述した通り抑うつ状態という強い落ち込みや慢性的なメンタルの不調を呈する「抑うつ型自律神経失調症」からうつ病に移行する場合もあります。

うつ病の場合は診断基準が存在している精神障害であり、脳の神経伝達物質の異常という説が現時点では有力です。精神の落ち込みと興味・関心のなさが際立ち日常生活もままならなくなるほどの状態に長期間陥ることになります。

ただ、うつ病がなかなか周囲に理解されないことがあるのと同じで、自律神経失調症も身体に問題がないからと適切な治療を施されなかったり、ただのストレスだと言われるケースも少なくありません。

特に複数の症状が絡み合って仕事や日常生活に支障が出たりすると、悪循環が繰り返される一方です。我慢しすぎてうつ病に移行してしまった場合やうつ病から来る自律神経の不調である場合は、治療に時間を要してしまいます。
「ただ単に、ストレスが溜まって気力が湧かないだけだろう」と自己判断せずに、専門機関に相談するのが近道でしょう。

自律神経失調症の治療

自律神経失調症の治療前述のとおり、自律神経失調症は何らかの原因によって不調が出現している状態のことを指します。そのため、起こっている症状に対する投薬などを通じて治療を進めることがメインになってくるでしょう。

また、性格特性も要因の一つになるため、個人のストレスの受け止め方について心理療法などを用いて出来る限り修正していくこと、生活習慣の見直しなどストレスの原因となる環境要因を変えていくことが重要になってきます。

薬物療法

以下は、症状に対する治療の目的で使用される薬剤です。

抗うつ薬

抑うつ状態と呼ばれる気分の沈み込みがみられる場合や、うつ病の診断があった場合に使用されます。脳内の神経伝達物質のバランスを調整して落ち込みや気分のふさぎ込みを改善させていきます。
「自律神経失調症で抗うつ薬を服用するの?」となかなかピンとこない人や抵抗感がある人もいるかもしれませんが、脳内環境は気分の変動に関係することが分かっています。抗うつ薬の効果は情緒不安定な心を落ち着かせ、ひどい落ち込みなどを少しずつ改善に導いていくのに役立ちます。

抗不安薬

緊張状態が高く、常に気が立っていて不安になりやすい・精神が張り詰めていて落ち着かない・・・といった時に精神を鎮める働きを持つお薬です。ただの緊張ではなく、日常的に焦りを感じるとか、急に不安に襲われる、といった場合に脳内の活動を落ち着かせる働きがあります。

睡眠導入剤

不眠の症状が出ている場合に治療に使われることがあります。
たとえば交感神経から副交感神経への切り替えがなかなか上手く行かず、寝付けないとか寝入っても数時間後には起きてしまうなどと安眠が妨げられている場合、生活の質が妨げられるだけでなく不眠そのものが集中力の低下や活気の低下を招いてしまいます。

睡眠導入剤を使って睡眠の基盤を整えるだけでも、症状が軽減することもあるので必要がある場合は抗うつ薬や抗不安薬と一緒に処方されることがあるでしょう。

その他、症状に対する投薬

胃腸症状に対しては整腸剤や胃腸薬、痛みや凝りに対しては痛み止めや筋弛緩剤など身体症状に応じて投薬されることもあります。

原因が自律神経なのであれば、身体症状を押さえようとしても根本的な解決にならないのでは?という声も上がるかもしれませんね。
しかし、不眠に対する睡眠導入剤と同じく、症状をいったん軽減させたり不快な状態を出来る限り改善させることでストレス因子を省くことは治療を進めるうえでとても重要です。不快な症状が強い場合や日常生活の質を極端に下げている場合、より自律神経のコントロールを乱す要因になっているかもしれないからです。

精神的な負担を減らすこともそうですが、同時に身体の負担を減らすことも必要なケースであれば、身体症状に対する投薬がなされる場合があるでしょう。

心理療法

自分の行動の癖や考えの癖を、内省を通じて認識していくことで心を軽くしていく治療法です。

カウンセリング

カウンセラーとの対話を通じて、自分の深層にある考えや気持ちに気づいたり、表出したりしていく時間です。自分がストレスとして認識していなかったことも、実はストレスだったと表面化することもあります。

認知行動療法

自分の考え方の癖やストレスの受け止め方・対処方法の傾向などを認識し、修正していくことを目的とした治療法です。

自律訓練法

自律訓練法とは、リラックスしたり少し眠たくなってぼんやりしている状態を自ら作り出せるようにトレーニングする方法となります。
特に自律神経失調症では交感神経が優位の過敏な状態が多いとされていますから、自律訓練法を使って自分自身で自己催眠状態を作り出すというのは有用な方法といえるでしょう。

また、副交感神経を優位な状態に切り替える方法でもあることから、

  • 気持ちを静め、穏やかな気持ちでいることができる
  • 過敏な状態から、入眠への準備にスムーズに移行することができる
  • 不安を抑え、衝動性を落ち着かせることができる
  • 痛みや苦痛から心身を解放させる

という効果が期待できます。

まとめ

このページを見て、「自分ももしかして、自律神経の乱れで調子が悪くなっているのかな」と考える人もいるかもしれません。
専門機関を受診しようかどうか悩んでいる時点で、不調に長い間耐えてきている人も数多くいるでしょう。すでに医療機関を受診しているけれども、内科的には何も見当たらずお手上げ状態、というケースもあるかと思います。

自律神経失調症の症状は非常に幅広く、原因が分かりにくいことそのものもストレスの因子になりやすいです。不調はあるが原因がハッキリしないという場合は、ぜひお気軽に相談してください。症状を軽くするお手伝いをさせていただければ幸いです。

監修

新橋メンタルクリニック
院長 狩野 彰宏

「メンタルケアで全ての人が今よりも生きやすく輝ける未来を目指して」

明るい未来を紡ぐために、当院は一心一意に皆様の心に寄り添ってまいります。
心のお悩みや困りごとがありましたら、どうぞ何なりとお問い合わせをくださいませ。

院長

「メンタルケアで全ての人が今よりも生きやすく輝ける未来を目指して」

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